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「先日話していたレストランなんですけど、プレゼンしていいですか?」
お客様が、一瞬ぽかんとしている。
ネイルをしに来たのに、一体何を言い出すのだという顔だ。
「お友達と行くイタリアンの話ですよ。おすすめ、まとめてきました!」
自分のことなのに「えっ?」と戸惑うお客様。すぐに、前回のネイル中に相談した話だと思い出し、
「えっ、調べてくれたの?」と、少々驚いている。
「もちろんですよ。いくつか候補はあるんですけど、たぶん○○様には△△が合うと思って。ただ、お友達の好みで候補は変わってくるかもです。」
あっ、仕事はネイルだった。
気づけば、ネイルそっちのけで話し始めていた。
我に返り、お客様に確認する。
「プレゼン、長くなりそうなので。まずネイルをして、乾かす間に説明したほうがいいですよね?」
「そ、そうね。楽しみだけど、先にネイルしてもらおうかな(笑)」
そうお互い了承したものの、すでにお客様と私の頭の中はイタリアンでいっぱいだった。
それ以来、このお客様は何かあるたびに、気軽に声をかけてくれるようになった。
・・・
私はすぐに本業を忘れてしまう。
そんなことは、日常茶飯事であった。
これは今に始まったことではない。
あれは、ちょうどiPhoneが日本で発売されたころだ。
首からiPhoneを下げお客様の家へ伺い、「今日は何がいいですか?」とギャラリーのように画面を見せると、
「あー、それ!新しいやつでしょ!」
ネイルはすっかり二の次となり、興味深々でお客様が聞いてくる。そうなると私の出番だ。
「これ、もう最高です!」
ネイルの施術そっちのけで、いきなりレクチャーを始めてしまう。
またやっている。
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あるとき、お墓参りの話になった。
きっかけは他愛もない雑談だった。
が、なぜか、お客様はどこにお墓があるのか?よく行くのか?とか、興味ありげに色々と聞いてくる。
全然面白くない私の(お墓参りの)話なのに、、、と思いつつも、聞かれるままにペラペラと話していた。
すると、突然。
「ねぇ、もしかして、私の代わりにお墓を見に行ってくれたりする?」
???
言っていることはわかったが、真意を計りかねた。
「実は、また来月から出張で○○へ行くんだけど、その間に祥月命日があって。すごく気になっていて、、、」
誰か代わりにお花を供えてくれたらな、、、とずっと思っていたらしい。
そのタイミングで、お客様が気になっているお墓の、すぐ近くへ墓参りに行くという人間(私)が目の前に現れたのだ。
「私でよければ」
そう、またやっていた。
気づいたら、今度はお墓の前に立っていた。
お墓に眠る方が好きだった花を伺い、いつもの花屋で花束を選び、お墓へ向かう。
お花を飾り、周りを少し整えて、お線香をあげた。
「はじめまして」と、ことのいきさつを、ここでもまたペラペラとご報告した。
一連の様子を動画と写真に収め、気づいたことをメモして、報告書としてお客様へ送った。
お客様は、とても喜んでくれた。
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ネイルの椅子に座るお客様は、ただネイルをしに来るわけではなかった。
悩みを話す人、迷いを打ち明ける人、誰にも言えないことをそっとこぼす人、彼と別れたと大泣きする人。
私はいつの間にか、その話を聞き、調べ、動いていた。ネイルは、そのための場所だったのかもしれない。
30年以上、そうやって過ごしてきた。
ネイルがなくなって、はじめて気づいた。
突出した才能もない私が、ネイルの仕事を30年以上も続けてこれたのは、目の前の人の、言葉にならないモヤモヤに気づいて、勝手に動いてしまうこと。
私がずっとやっていたのは、それだけのことだった。
だったら、次はそれをそのままやればいい。
ネイルという相棒が、最後に置いていってくれたアイデア。
それが、「おひとりコンシェルジュ」だった。











