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その日は突然やってくる。
わかっているはずなのに、すぐ忘れてしまう。
のど元過ぎれば、というやつだ。
今回もそうだった。
・・・
なんとなく、いつもと焼き加減が違う、そう感じていた。
私の食卓を支える家電、ワッフルメーカー。
そう、毎日のように使っていると、それが色んな意味で当たり前になり、何の疑いもなく、明日も問題なく使う前提で生活している自分がいる。
危うい兆候はあった。
かみ合わせ部分はすでに壊れて、カチッと閉まらなくなっていた。
もうそろそろ駄目になってしまうかも、と一瞬頭をよぎったものの、それは大きな洗濯ばさみで挟んで一件落着。
締りが悪いだけで、焼き具合に全く支障はなかったからだ。
カバンのファスナーが壊れてしまったけど、荷物は十分入るから、みたいな感覚。
たいした問題ではないなと、いつの間にか閉まらない不具合さに慣れ、閉まらないのがデフォルトになっていた。
まるで元から洗濯ばさみで挟む仕様だったかのように。
その後も順調にワッフルにクリスピーポテト、トルティージャサンドなどなど、私の食卓を彩っていた。
が、ある日、
朝食のワッフルを焼こうと、生地を流し入れ、いつもの心地よい出来上がり音が聞こえるのを待っていた。
「ピーピーピー」とあのかわいい音が聞こえ、心躍らせながら、蓋を開けた。
???
えっ?なんか違う。。。
表向きは、なんか焼けた風を装っているが、あきらかに違う様相を醸し出してた。
トングでワッフルに触れると、要らぬ弾力ある仕上がり。
取り出すと、片面はキツネ色風、片面はまだまだこれから感溢れる色合いであった。
いや、これはたまたまのハプニング、
2枚目のほうは?とフリップさせるも、結果は同じ。
ま、まさか!?
がっかりである。
正直ゴミ箱へ投げ捨てたい衝動に駆られたが、グッとこらえ、オーブンに放り込んだ。
計量が大の苦手な私は、目分量で生地を作る。
いつもの経験値でほぼ完璧に作ってきたのに、魔が差したのか?寝ぼけていたのか?
時にアレンジしまくりなので、配合がよくなかったな、そう思った。
なぜかわからないが、壊れたという案が浮かばなかった。
その後3日ほど不出来なワッフルをかみしめ、ようやく3日目にして気が付いた。
これ、なんかおかしくないか?
ダイヤル調整して、一番ベーシックなやつを作ってみた。
果たして、、、
その出来上がりはさらに悪化していた。
壊れた。
ようやく、機械が壊れたと認識した。
ショックである。
家電量販店がひしめく現代にあって、なんならオンラインで朝注文すれば夜届く現代にあって、ワッフルメーカーはすぐには届かないのだ。
「これください」とすぐに手に入らないのに、毎日使う必須家電である。
「パンケーキでいいじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、ワッフルじゃないと駄目なのだ。ワッフルがいい、ワッフルが好きなのだ。
がっくりと落ち込んだのもつかの間、今度は新しいワッフルメーカー探しに夢中になっていた。
すぐにポチリと購入するも、到着は数週間後。
何を根拠に、明日も同じ1日が訪れると思っているのか?
そして、ある夜のことを思い出していた。
・・・
夜中に、膝の痛みで目が覚めた。
左ひざの内側が痛い、それから1時間ごとくらいに痛みで起き、ぐっすり眠れなかった。
「なんだろう?」
転んだ覚えも、急に酷使した覚えもない。
最近、足や腕などに、身に覚えのないあざを作っていることがある。
ネイリスト時代、年配のお客様が腕や足にあざを作って来ることがよくあった。
「どうされたんですか?」と聞くと、「知らないのよ」「覚えてない」と本人全く自覚なし。
こういうことがしょっちゅうあり、歳を重ねると、様々な感覚が鈍ることがあるらしいと思っていた。
だから最初にドキッとしたのは、膝よりもそっちであった。
とうとうついに、足をぶつけたのに気づきもしない、覚えてもいない、老いの始まり。
足の痛さより、そちらの気づきのほうに恐怖を抱いた。
が、膝の痛みは、次の日も次の日も続いた。
歩きすぎか?
私は歩くのが大好きで、普段平均1万歩ほど歩く。
あまり歩きすぎもよくないと聞いて、少し控えるようにはしていた。
それよりも腰痛のほうが辛いので、腰が悪すぎて膝にきているのかもしれないと思った。
病院へ行くと、筋肉が腫れている、膝を使いすぎでは?とのこと。
接骨院へ行き、鍼治療をしても変化なし。
結局、別の整形外科で「初期の変形性膝関節症」と診断された。
病名を聞いて納得した。
ワッフルメーカーと膝。
一見、接点のない出来事なのに、どちらも同じだった。
「その日」は、突然やってくる。
だから、頭の片隅に薄っすらあることを、
「そのうち」にしておくのが少し怖くなった。
その日は、ワッフルメーカーだけに来るわけじゃないのだから。








