ペンキを塗る背後で、床は魔法にかかった。

洗面所のペンキを塗り終えて振り返ると、洋室の床が2/3貼られていた。

ペンキを塗っている、ちょっと目を離した隙に、隣の部屋の床がみたこともない様相に変貌していた。

まるで一瞬他人の家にワープしたみたいに。

・・・

「床材余ったから、洋室も貼れると思うよ、、、」と言い終わらないうちに、勝手に友人の旦那さんは作業を進めていた。

みるみる変わりゆく我が家。

当初のリフォーム予定では、キッチンと玄関からリビングの床を張り替えるだけ?だった。

ひとり暮らしだし、先も長くはなく、この後どのくらいこの家にいるかもわからない。だから、最低限整えれば十分だと考えていた。

しかし、整形ではないが、あっちを直すとこっちも、こっちを直せばそちらも、、、といったように、次から次へと気になりだしてしまうのだ。

そのことをうっすら予想はしていたものの、「あーやっぱりここも直さないとダメか、、、」という、ワクワクしない心境になる。

べつに、無理に直す必要はない。

が、見て見ないふりはできないというか、自分の家なのに心地よくない。

あの赤いキッチンとの落差も激しすぎるのだ。

それに、当たり前だが、きれいにすれば気持ちがいい。結局、ボロい洗面所にも手をつけることになった。

洗面所も、ひとりだから、シンプルなやつをちょっと置くだけでいい。

またIKEAでの物色が始まった。

これがいいかなと、決心がつきそうなころ、またまた友人の旦那さんからオファーが降ってきた。

「うちに使ってないシンクあったから、よかったら使う?あげるよ」

そう言って、LINEに洗面台のスクショが送られてきた。

業者さんでもないのに、なんでもある家だな、と笑ってしまった。

で、写真をみると、「?」

そこには、Pinterestのスクショのような、Pedestal(台座)タイプのおしゃれな洗面台が写っていた。

えっ、無理、、、

「うちの昭和の洗面所わかってますよね?ミスマッチどころか、一周回ってダサくなるんですけど。」

「そんなことない、床も直すでしょ、大丈夫!」

またしても、強気に押されて、ありがたく頂戴することとなった。

はたして、届いた洗面台は単体で見ると、めちゃくちゃいい感じであった。

実用性やコスパよりも、「自分の好き、楽しい、面白い」を大切にする私にはピッタリだ。

とはいえ、本当にこれ置いて大丈夫かな?という一抹の不安は消えずにいた。

・・・

そして、いよいよ工事が始まった。

まずは洗面台を運び出し、べりべりべりっと、あっという間に防水パンを引っ剥がすはずが、大難航。

ここの洗面所に限らず、今回のリフォームで、昭和から鎮座してるものを撤去するのが一番大変であった。

途中「あれが足りない」「これがない」とホームセンターへ調達に行ったり、ネットで色々調べたりしながらも、そこからはあれよあれよという間に作業が進んだ。

ペンキを塗って、シンプルな壁完成!というタイミングで、羽目板の提案を受ける。

・・・

「え、羽目板って何?」

・・・

リフォームど素人なんだから、もっと事前に確認してほしい。

「そんなのつけなくていい、ごちゃごちゃさせたくない。そのままでいい。」と抵抗したが、またしても、

「絶対つけたほうがいい、そのままじゃダサい」と押され、承諾してしまう。

みるみる変貌していく壁。

「ここもペンキ塗っといて」と言われ、塗装作業に入る私。

背後から「床材余ったから、洋室も貼れると思うよ、、、」という声が聞こえたが、ペンキ塗りに集中しているため無視していた。

隣の洋室は、自分でCFを貼るとかすればいいと思っていたし、すでにそのプランは伝えてあったはず?だった。

が、ペンキを塗り終わり、振り返ると、見たことのもない洋室が目に入ってきた。

「え?マジ」

「床材全然足りたからさ、きれいでしょ?」

もはやその行動力に脱帽である。

半ば友人の旦那さんの言いなりになって進んだような、洗面所改造であったが、出来上がった洗面所は、まさかの私好みになっていたからビックリである。

そして、ここは絶対残したい!と決めていた、昭和の家の象徴のような、ドア上のガラス部分。

ここがまた、いい感じなのだ。外から見たときの全体の印象が、私の「好き」にマッチしていてうれしかった。

結果、赤いキッチンとはまたイメージの違う、家全体で考えれば、統一感ない洗面所になったが、そんなことはどうでもいいのだ。

2面性のある家のほうが楽しい。

ベッドルームと合わせて、ほんわかリラックスできるスペースに仕上がった。

・・・

振り返ってみると、このプチリフォーム体験は本当に楽しく、色々と勉強になった。

裏側を見たことで、今まで、「○○屋さん=プロ」だからすごい、間違いないと思っていたが、そうではないこともある、ということを身をもって知った。

そして、無知ゆえにその都度激しく抵抗したが、経験者の意見を受け入れて正解だった。

自分の意見を押し通していたら、いまひとつ、いや、かなり中途半端な空間になっていたと思う。

この勢いで終了予定であったリフォームプロジェクトだったが、まだまだ細かい所は手入れが必要だ。

そして、難題の和室もまだ残っている。

大げさかもしれないが、それは人生でやり残したことがあるような感覚だ。

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