スワンナプームの「不運」と、イランからの「贈り物」

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スワンプナーム空港のカフェテリア

ひとり、食事を待っていると、斜め前に座った欧米人らしき男性が、ずっとこちらを見ている。

なんだか嫌だな。

座っている場所が悪いのか?顔になんかついているのか?

視線をそらしていたはずが、目が合ってしまい、とりあえず微笑んでおいた。

すると、「こんにちは」でもなく、いきなり彼が話し始めた。

「タクシーに乗る前に、ちゃんと確認したんだよ、大丈夫か?って」

「はぁ?」

まるで一緒に旅しているみたいなノリだ。

私の表情から、「一体何を話しているんですか?」という空気を察したのか、彼はことの顛末を語り始めた。

・・・

クラビに滞在していた彼は、その後いくつか場所を転々とし、そこからタクシーで2時間ほどの道のりを移動して来たらしい。

道で捕まえたタクシーの、タイ人運転手のおじちゃんは、なんとなく酔っぱらっているような頼りなげな感じで、一抹の不安はあったらしい。

「スワンナプーム空港へ行ってね、スワンナプーム空港のほうだからね」と何度も念を押した。

ここまで聞いて、その後の展開がわかってしまい

「えっ、まさか?」というと、すかさず彼は言った。

「そうなんだよ!なんだか景色が違うぞと思ったら、ドンムアンだった」

そう、バンコク圏内には、スワンナプーム空港と、昔はメインであったドンムアン空港がある(今ももちろん現役であるが、LCCや国内近距離がメインだ)日本の成田と羽田のような感じか。

怒りがこみ上げたが、飛行機まで時間がないから、急いでスワンナプーム空港へ行ってくれと頼み、ようやく到着。

遠回りした上に、跳ね上がった料金を払いダッシュした。

はたして、飛行機は搭乗を締めきっており、間に合わず。

途方に暮れ、とりあえずご飯をたべているのが今である。

「またチケット買わないといけない」がっかり気味な彼とは対照的に、若干頭から湯気気味な私

「それ、カウンターで交渉した?」
「いや、してない」
「だって、タクシーが間違ったんでしょ、失礼しちゃう」
「航空会社のカウンターでそれ言ったほうがいいよ!」
「でも、もう飛んじゃったからさ」
「は?じゃ私が聞いてくるよ!」

なんだかわからないが、あっという間に自分事にすり替わってしまった瞬間であった。

「えっ、一緒に行ってくれるの?」
急に元気になった彼と食事を終え、カウンターへ向かう。

「タクシーが間違って間に合わなくなったって強く言ったほうがいいよ」
カウンターで交渉する彼を背後から見守る私は、まるで保護者だ。

笑顔で戻ってくる彼を見て、結果が分かった。

「手数料だけで、次の便を手配してもらえた!」

私の飛行機までまだ時間がたっぷりあったので、その後デザートをごちそうしてもらった。

最後の最後に楽しい思い出ができたなと、最高な気分で搭乗ゲートをくぐった。

・・・

まだ少し時間がある。

タイバーツが中途半端に残っていたので、何か買って使ってしまおうと、ミニマート的な店に入った。

お菓子にするか石鹸にするかと迷っていると、隣にいたオリエンタルな男子がタイバーツのお札を私の目の前に差し出した。

「これ使う?」
「えっ?」
「僕もうタイには来ないと思うから」
「えーっ、でも、、、」

話を聞くと、彼はイラン人で現在はUAEに住んでいて、ずっとタイに来てみたかったから来たとのこと。

でも、事前のビザ取得が大変だったから、もう来ないと思う、と言う。

「だから、よかったら使って」

ということらしい。

なんだかわからないが、すごく暖かい気持ちになって、オファーを受け取り、一緒にお土産を選び買った。もちろん、わずかに出たお釣りももらった。

その後出発まで話をして、「僕はあっち」「私はこっち」と、別れた。

ひとり旅がくれた、思いがけない贈り物だった。

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